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2008年7月 5日 (土)

妖精達(1) 天馬よりも遠く跳べ [Fairies(1) Leap longer than Pegasus]

 妖精(フェアリー,fairy)というとピーターパンの相棒のティンカーベルのイメージが強いが、もっと可愛くない妖怪変化(ようかいへんげ)も含めることもあるらしい。チェス型ゲームで妖精と言えば、変則将棋変則チェス(Chess Variant)におけるフェアリー駒(fairy pieces)、つまり普通の将棋やチェスの駒とは異なる性質を持つ駒のことである注1)。そんな変則的な動きをする愛すべき駒達を紹介していきたい。

 さてナイトの動きは歩や飛車など隣接マスへ移動してゆく駒と比べると一段跳んでいて、初めて登場したらフェアリー指定を受けそうだが、古代チャトランガからの由緒があり、多くのチェス型ゲームでそのままの動きを残しているのでフェアリーとは見なされない注2)。だがこれが、斜め2マスではなく3マス目まで足を伸ばすと立派なフェアリーである。

 そのような駒のひとつがチャンギ(Janggi,朝鮮将棋)の象(サン)である。チャンギのルールの最も信頼できるサイトは日本では韓国将棋協会東京支部のサイトであろう。動きはここで説明されている通り、縦横四方に1マス進みさらに斜めに2マス進むというものである。実は私は言葉だけの表現で知ったときは、縦横四方1マスにシャンチーの象や相の動きを加えた動きだと思っていたのだ。まあこんな駒もあって良いとは思うがフェアリー度は実際のチャンギの象(サン)の方が上である。

 これだけ脚が長いと将棋やチェスだけに慣れた身にはなかなかに読みづらい。東京外国語大学の先生のサイトにある簡単な詰め将棋に挑戦したが、問い1、2は3分程度で解けたものの、問い3は答えを見てしまった。

 碁の用語に大桂馬というものがあるが、これは斜め四方に1マス進みさらに縦横に2マス進む動きなので象(サン)の動きとは異なる。だが世界の伝統的チェスの中には、この大桂馬の位置に動く駒を使うものがある。大型チェスとして有名な、チムール帝国時代(1336-1405)に指されたというチムールチェス(Tamerlane chess)である。このcamel(駱駝)という駒がそうだ。ただしチャンギの象(サン)の方は、シャンチーの馬(マ)と同じく合駒が利くのが異なる。

 さらにチムールチェスにはもっと足の長いgiraffe(キリン)という駒があり、これは斜四方1マスの後さらに縦横3マス以上好きな数だけ直進できる。なるほど四肢の長いキリンか!、というよりは2本の長い角を持つオリックスのイメージが適切な気もする。とはいえ近くには動けないところは足下に入られると弱いキリンのイメージに近いようにも思える。9×9のマス目に乗せてみると意外と動けるマス目が少なくて、まさに狭い檻に入れられて首をすくめているキリンのようで可哀想になる。しかし御安心を。チムールチェスは11列×10段の盤で戦われるのでgiraffeも存分に脚の長さを活かせると思う。キリンは草原を疾駆するのが似合うのだ。

 以上、3マス跳び馬の登場は、チャンギ発祥の11世紀(高麗時代)、チムールチェスなら14世紀と考えるのが普通だろう。ところが、実は不思議な文献が残っている。その話は次回に。


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注1) フェアリーチェス(fairy chess)という言葉は、そもそもは変則ルールを導入したチェス問題(problemsまたはcompositions)に使われる言葉で、対戦するゲームについてはチェス・バリアント(chess variant)と呼ばれる。しかしchess variantに登場する現行のチェスとは異なる性質の駒も、そのままフェアリー駒と呼ぶのが一般的らしい。
 英語でのchess variant(変則チェスというよりは、チェス変種とか変型チェスとでも訳すのがよいだろうか?)は現行のチェス(オーソドックス・チェス,orthodox chess)以外の全てのチェス型ゲームを指すので、日本将棋もシャンチーもchess variantに含まれる。
 日本語で変則将棋というと気分的には日本将棋から派生したバリアントの意味が強くなるかも知れない。

注2) 日本将棋では桂馬がナイトの動きをする八方桂と称する変則将棋がある。

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